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音声再生品質を改善する8つの方法

2025-05-29
  リスニングルームの音響環境がオーディオシステムの再生効果に及ぼす影響は、他のいかなるオーディオ機器よりもはるかに大きいことは周知の事実です。音響環境を改善する方法は数多くありますが、過剰な処理は逆効果となる可能性があります。例えば、音のディフュージョン(拡散)は効果的です。ディフュージョンは音を四方八方に散乱させエコーを防止しますが、室内の全ての表面を拡散処理すると、ステレオのイメージ定位が悪化し、音が拡散して正確な定位を形成できなくなります。
  小部屋の室内音響はさらに複雑です。多くのオーディオ書籍がこの問題を取り上げていますが、明確な解決策は提示されていません。異なる専門家の意見が矛盾しているためです。しかし、室内音響環境とスピーカーの配置位置、リスニングポジションが音響再生に重大な影響を与える点については意見が一致しています。本稿では難解な理論や奇抜な音響処理法は避け、シンプルで実用的な手法を紹介します。
  1. 床に厚手のカーペットを敷く
  音波を強く反射する最も問題となる面は床です。カーペットは低周波には効果が薄いですが、高周波の反射吸収には最優先で対応すべきです。直接音から5ミリ秒(mS)前後で到達する初期反射は直接音の一部として認識され、同一方向から来るため聴覚上問題となります。純粋な音を再生するスピーカーに、床反射による高周波が混入するのは避けるべきです。天井への吸音処理が現実的でない場合、吸音処理のない床と天井という2つの平行で反射の強い面があると、音波が反射を繰り返し音質を劣化させます。
  2. 窓にカーテンを掛ける
  音楽ホールでは反射ガラスの使用が避けられます。リスニングルームでは壁面が近いため、ガラスの反射音が顕著な不快感を生みます。開閉可能なカーテンを設置し、音楽鑑賞時には閉めることを推奨します。また、ガラス扉の本棚や家具は室内に置かないでください。
  3. 平行壁面の反射を防止する
  平行な壁面は床・天井同様、無限の反射(フラッターエコー)を引き起こし音質を劣化させます。手を叩いてエコーが聞こえる場合は問題ありです。本棚、特に不規則に本が並べられた本棚は優れたディフュージョン効果を持ち、平行面の反射を遮断します。専用のディフューザーも販売されていますが、本棚を設置するだけでも十分な効果が得られます。
  4. 高音ユニットの「ミラー反射点」に吸音材を貼る
  天井が教会のように高くない限り、各スピーカーの高音ユニットに対応する「ミラー反射点」に吸音フォームを貼付します。「ミラー反射点」とは、天井(または床)に鏡を置いた際、リスニングポジションから高音ユニットが映る位置です。天井の処理は床ほど厳密でなくても構いませんが、適切な処理は効果的です。図1と図2を比較すると、天井のミラー反射点に数mm厚・0.1m2以下のフォームを貼るだけで室内音響が改善されることが分かります。
  5. 残響時間を長くしすぎない
  ミラー反射点への小規模な吸音処理では室内音響は大きく変化しません。しかし、大面積の吸音材や分厚いカーテンを使用すると吸音過多となり、音楽が死んだように聴こえる可能性があります。薄く軽い吸音材は高周波を吸収しますが、低周波には効果がありません。一般的に吸音材の厚さは音波の波長の半分程度必要です。10kHz(波長3.4cm)では数cmのフォームで吸収可能ですが、200Hz(波長1.7m)では効果がありません。このため、室内では明らかな周波数バランスの崩れが生じます。残響過多の音場となり、高域が吸収され低域が残る状態となります。
  6. スピーカーに近づいて聴く
  時折、スピーカーに近い位置で聴いてみることをお勧めします。実際、多くのリスナーがスピーカーから離れた位置で聴くことで、本来のスピーカーの音ではなく「部屋の音」を聴いています。近距離で聴くことは快適であり、スピーカーから直接聴くほどの正確さはありませんが、リスニング基準の比較として有効です。補足:殆どの録音作品は、音質の良し悪しに関わらず「近接場(ニアフィールド)」で録音されています。
  7. 床反射は音染みの主要因
  前述のように、吸音材は床・天井からの初期反射(高域成分)を吸収します。ここで言う初期反射とは、直接音から5ミリ秒以内に到達する反射音です。これほど速い反射音は直接音と融合します。初期反射の高域成分は耳障りな音を生み、中域成分は音染みの原因となります。図3と図4は、床反射が存在する場合と、基本的な処理で床反射を除去した場合の比較を示しています。
  反射を除去すると中域特性が理想化され、応答が平滑化されます。これがラインソース型スピーカーが一定の支持を得る理由です。遅延した床反射が存在しない(厳密には床・天井・スピーカーの組み合わせが反射を生まない)ため、スピーカーの音染みが大幅に低減されます。ポイントソース型スピーカーでも、図5に示すように音染みの少ないモデルを選択可能です。課題は、この良好な特性を得るために床に大面積の吸音材を敷く必要性です。音楽鑑賞時のみ一時的に設置する方法もあります。ミラー反射点に厚手の吸音材を配置することで問題を解決できます。
  8. 最適な低域を得るためスピーカー配置を徹底調整
  スピーカー配置は複雑な問題のため、ここでは基本を簡潔に説明します。配置に影響する主な要因は、①室内共鳴モード(Room Resonance Mode)と、②リスニングルーム境界がスピーカーの放射インピーダンスに与える負荷効果です。アリソン効果(Allison Effect)によれば、境界が発音ユニットから波長の1/9の距離にある場合、発音ユニットは境界反射の影響を受けません。このため、当該周波数での音響放射パワーが減少します。
  コンピューターシミュレーションで最適位置を決定できますが、数時間かけて手動で調整する価値は十分にあります。低音ユニットが床・側壁・後壁から受ける距離は、可能な限り異なる値を設定してください。一般的な配置原則として、これらの距離の中間値の二乗が、最大距離と最小距離の積とほぼ等しくなるようにします。スピーカーを部屋の角に近づけると低域が強調されます。
  「うなり音(Warble tone)」と音圧レベルメーターでテストできます。特定位置で300Hz以下の音がより多く聴こえる場合、適切な配置と言えます。RTAスペクトラムアナライザーがあれば、配置決定が容易です。根気を持って調整を繰り返すことで、驚くべき結果が得られます。図5が示すように、適切なスピーカーを粘り強く調整すれば、オーディオシステムの真価を発見できるでしょう。