ミニアレイマイク技術に基づく携帯通信製品の設計
携帯製品の構造的空間制約が増大する中、スピーカーは小型化されながらも大音量が要求され、様々なノイズやエコー(ビデオハンズフリー通話時の線形/非線形エコー)を抑制し、騒音環境下でクリアな音声通信を実現することが課題となっている。
米国ForteMedia社が開発したFM2010チップは、ミニアレイマイク(SAM)特許技術を基盤とし、空間フィルタリング技術・遠近距離指向性音声収集・音響ノイズ抑制・音響エコーキャンセルを実現する低消費電力/低コストのシングルチップである。本稿では、携帯通信製品におけるSAM技術の設計要点、FM2010チップの主要機能、及びGSM携帯電話への応用例について解説する。
■ ミニアレイマイク技術の設計要点
SAM技術はUni-MIC(主マイク)とOmni-MIC(参照マイク)の2つのマイクで構成され、背対背または並列配置が可能である。両マイクの物理特性の差異をFM2010チップで処理し、円錐状の収音ビームを形成して空間フィルターとし、非定常ノイズを抑制する。マイク特性・構造設計・FM2010のパラメータ調整が、収音ビームの方向・角度・非定常ノイズ抑制効果を決定する。
1 マイク選定
4mmサイズのUni/Omniマイクを推奨。Uni-MIC要件:感度-40dB±3dB、300Hzで8.5dB未満の減衰、3.4kHzで3.5dB未満の増幅、カーディオイド指向性(0°と90°で感度差4dB以上、0°と180°で10dB以上)。Omni-MIC要件:感度-40dB±1.5dB、300Hz~3.4kHzで平坦な周波数特性。中国・濰坊IEA社製UniマイクB4015UL403とOmniマイクB4015AL-398を推奨。
2 構造設計
Uniマイク特性の維持・収音ビーム方向が重要。ハンズフリー機能の場合は、スピーカー/マイク防振・気密性を追加考慮。収音ビーム方向はノイズ抑制方向を決定するため、有用信号がビーム内にあることを保証必須(逸脱するとノイズとして抑制される)。製品外形設計時はUniマイクの指向方向を厳密に配置。筐体組込後も0°-180°感度差6dB以上を維持し、感度/周波数特性を保持する。防振処理で非線形エコー低減、気密性で線形エコー抑制と信号対エコー比向上を実現。
3 FM2010処理後の信号特性
図4にSAMによる収音信号とFM2010処理後出力信号の比較を示す(音源距離0.3m、音圧83dB SPL)。Uni-MIC(0°/180°)、Omni-MIC(0°/180°)、Lout出力(0°/180°)の測定結果から、収音ビーム内(0°)と外(180°)では出力信号に20dBの差が確認できる。非定常ノイズがビーム外にあれば20dB抑制可能。収音ビーム有効範囲は2m。ビーム角度はUniマイク指向特性とFM2010パラメータ調整で決定される。
■ 信号処理フロー
Uni/Omniマイク信号→プログラマブル増幅器→ADC→ハイパスフィルタ→音声処理器(線形エコーキャンセル/非線形エコーキャンセル/VAD検出/ノイズ抑制/マイク音量設定)→DAC→TWL3014/16アナログベースバンドプロセッサ(MICIP/MIC1N入力)→上りリンク処理→OMAP733/750デジタルベースバンドプロセッサ。
■ 制御フロー(OMAP733/750→FM2010)
SHIインターフェース/PWD/RESET/ANA_IRQ制御ピン経由で操作。通電後PWDをHigh、ANA_IRQをLowに設定→リセット→クロックソース/周波数/DSP動作速度パラメータ送信→省電力モード移行。図8に示す通り、通話モード(着信/発信/録音)に応じてFM2010をウェイクアップ→リセット→ハンズセット/ハンズフリーモードパラメータを送信:
・ハンズセットノイズキャンセルモード:マイク数/ゲイン/音量/エコーキャンセルパラメータ/VADパラメータ
・ハンズフリー会議モード:マイク数/ゲイン/音量/反転設定/エコーキャンセルパラメータ(小声/通常/大声対応)
・ハンズフリーパーソナルモード:ハンズセットと同手法(エコーキャンセルパラメータ要調整)
通話終了後はFM2010のCODECを停止し省電力モードに設定。図9のGSM携帯電話テストモード時は、FM2010がバイパスモードで動作(DSP処理無効)。Uniマイク入力信号→プログラマブル増幅器→LOUTアンプから直接出力。SHIインターフェースで増幅率パラメータをオンライン調整可能。
米国ForteMedia社が開発したFM2010チップは、ミニアレイマイク(SAM)特許技術を基盤とし、空間フィルタリング技術・遠近距離指向性音声収集・音響ノイズ抑制・音響エコーキャンセルを実現する低消費電力/低コストのシングルチップである。本稿では、携帯通信製品におけるSAM技術の設計要点、FM2010チップの主要機能、及びGSM携帯電話への応用例について解説する。
■ ミニアレイマイク技術の設計要点
SAM技術はUni-MIC(主マイク)とOmni-MIC(参照マイク)の2つのマイクで構成され、背対背または並列配置が可能である。両マイクの物理特性の差異をFM2010チップで処理し、円錐状の収音ビームを形成して空間フィルターとし、非定常ノイズを抑制する。マイク特性・構造設計・FM2010のパラメータ調整が、収音ビームの方向・角度・非定常ノイズ抑制効果を決定する。
1 マイク選定
4mmサイズのUni/Omniマイクを推奨。Uni-MIC要件:感度-40dB±3dB、300Hzで8.5dB未満の減衰、3.4kHzで3.5dB未満の増幅、カーディオイド指向性(0°と90°で感度差4dB以上、0°と180°で10dB以上)。Omni-MIC要件:感度-40dB±1.5dB、300Hz~3.4kHzで平坦な周波数特性。中国・濰坊IEA社製UniマイクB4015UL403とOmniマイクB4015AL-398を推奨。
2 構造設計
Uniマイク特性の維持・収音ビーム方向が重要。ハンズフリー機能の場合は、スピーカー/マイク防振・気密性を追加考慮。収音ビーム方向はノイズ抑制方向を決定するため、有用信号がビーム内にあることを保証必須(逸脱するとノイズとして抑制される)。製品外形設計時はUniマイクの指向方向を厳密に配置。筐体組込後も0°-180°感度差6dB以上を維持し、感度/周波数特性を保持する。防振処理で非線形エコー低減、気密性で線形エコー抑制と信号対エコー比向上を実現。
3 FM2010処理後の信号特性
図4にSAMによる収音信号とFM2010処理後出力信号の比較を示す(音源距離0.3m、音圧83dB SPL)。Uni-MIC(0°/180°)、Omni-MIC(0°/180°)、Lout出力(0°/180°)の測定結果から、収音ビーム内(0°)と外(180°)では出力信号に20dBの差が確認できる。非定常ノイズがビーム外にあれば20dB抑制可能。収音ビーム有効範囲は2m。ビーム角度はUniマイク指向特性とFM2010パラメータ調整で決定される。
■ 信号処理フロー
Uni/Omniマイク信号→プログラマブル増幅器→ADC→ハイパスフィルタ→音声処理器(線形エコーキャンセル/非線形エコーキャンセル/VAD検出/ノイズ抑制/マイク音量設定)→DAC→TWL3014/16アナログベースバンドプロセッサ(MICIP/MIC1N入力)→上りリンク処理→OMAP733/750デジタルベースバンドプロセッサ。
■ 制御フロー(OMAP733/750→FM2010)
SHIインターフェース/PWD/RESET/ANA_IRQ制御ピン経由で操作。通電後PWDをHigh、ANA_IRQをLowに設定→リセット→クロックソース/周波数/DSP動作速度パラメータ送信→省電力モード移行。図8に示す通り、通話モード(着信/発信/録音)に応じてFM2010をウェイクアップ→リセット→ハンズセット/ハンズフリーモードパラメータを送信:
・ハンズセットノイズキャンセルモード:マイク数/ゲイン/音量/エコーキャンセルパラメータ/VADパラメータ
・ハンズフリー会議モード:マイク数/ゲイン/音量/反転設定/エコーキャンセルパラメータ(小声/通常/大声対応)
・ハンズフリーパーソナルモード:ハンズセットと同手法(エコーキャンセルパラメータ要調整)
通話終了後はFM2010のCODECを停止し省電力モードに設定。図9のGSM携帯電話テストモード時は、FM2010がバイパスモードで動作(DSP処理無効)。Uniマイク入力信号→プログラマブル増幅器→LOUTアンプから直接出力。SHIインターフェースで増幅率パラメータをオンライン調整可能。