ニュース

オーディオエンジニアへ、「ルール」に基づくシステムゲインの話をしよう

2025-05-29
  初期のPA業界では、スピーカーとアンプを用いて音圧ゲインを得るのは非常に困難な作業だった。当時、100W 甚至150Wのパワーアンプはスピーカーに接続すれば、まさに天霸王(最強クラス)だった!つまり主流はワット数の議論であり、現在の音圧ゲイン基準とは異なっていた。
  現在、100ワットアンプは主流ではなくなり、ハイテクスピーカー製造技術が消費市場に浸透し、1000W甚至それ以上の高出力アンプが登場している。今日の工業技術では、ゲイン問題は十分な予算さえあれば容易に解決できる。しかし、ゲームのルールが確立された後も、人々の認識は同期して更新されず、知識の断層が頻繁に発生している。ましてや当社は規格策定機関ではなく、言語の問題もあり、「ユーザーバグ」の発生率はさらに高くなる。
  現在、我々の音響業界で、電気物理の対数法則に基づいて現場に必要なスピーカー数やアンプのゲインを算出している者はどれだけいるだろうか?ほぼ価格でスピーカー数量を決めており、この問題は表立って真剣に議論されたことがない。今こそルールに則って自社システムの能力を理解しよう。
  はじめに
  音響増強/補助システムの構築は、多くの人がその真髄を理解できていない。音声伝達に補助が必要なのには大きな理由がある。我々が対面で会話するのは直接的で明瞭だが、もし30メートル離れていたらどうか?楽に、かつ明瞭に話すためには補助が必要だ。何によって?それは電音システムである。電子機器を用いて現場に必要なリスニング環境を拡張するには、音響機器構成の計算が必要となる。(以下、従来通り数学を可能な限り省き、記事を面白くする。ここで導入するデータは、新規の「アレイ」アルゴリズムではなく、既存の物理法則と人間の耳の対数特性に基づく比較である。)
  どれだけのゲインが必要か?
  優れたサウンドマンは、常に自身が担当する音響システムとSPLの全体像を明確に把握している。これにより音楽プログラムの起伏をコントロールできる。事前に構築・操作すべき音圧値がなければ、システム全体が要求する総ゲイン仕様を下回ったり超過したりしがちで、業界ではこのようなケースが少なくない。
  注意すべき点:音声ゲイン条件が不十分なシステムを無理に使用してはならない。損傷するのは機器だけでなく、自身の技術力も疑問視される。一方、総音声ゲイン条件が現場の定格要求を上回れば、パネル担当のサウンドマンは楽しく快適に作業を享受できる。
  作業条件を仮定しよう:屋内中規模会場(よく直面する環境)で、スピーカーからリスナーポジションまで、95dBの通常音楽プログラム再生音圧を確保したい。相対的なダイナミックピーク値は101dBとなり、さらに希望の10dBダイナミックピーク余裕(ヘッドルーム)を加え、現場の瞬時のパフォーマンスダイナミック音圧要求を満たす。
  周知のように、スピーカーの音響放射は球面状に広がり、音源点からの距離減衰は距離の二乗に比例する。この換算に基づけば、距離が2倍になるごとに音圧レベルは6dB損失する(注:この換算法は垂直アレイには適用不可)。
  さらに、音響コンソールが80フィート(約24.24m)に設置され、スピーカー感度が国際AES基準(Audio Engineering Society)の1m・1W入力時の音圧レベルを基準とすると、距離によるレベル損失式は:
  式1
  音圧距離損失値=20log(フィート距離/3.3)
  音圧距離損失値=20log(距離/メートル)
  式1の第1行は距離をフィートで計測した場合のメートル変換式である。仮定データを代入(エンジニアリング電卓使用)、80フィートは約24.242424m → 24m。24mをlog(対数)すると1.38457…。20倍すると27.6915… → 四捨五入で28dB。
  つまり、リスナー位置と音源点が80フィート(24m)離れると、28dBの音圧損失が発生する。先の例で設定したダイナミックピーク値101dBに、予備10dBのヘッドルームと28dBの距離損失を加算:101dB+10dB+28dB=139dB。これにより、コンソールからスピーカー音源位置まで、最大SPLは139dB必要と判明。もし80フィート先でも139dBを維持できるスピーカーがあれば1台で済むが、技術は未だそこまで発達しておらず、AES基準1m@1Wで139dBの定格ピーク音圧レベルを満たすスピーカーを選択し、さらに同仕様のスピーカーを追加する必要がある。これがメインスピーカーが多数必要となる理由である。
  現在使用されるメインスピーカーはほぼフルレンジ(単一ユニット)ではなく、3ウェイ(高音HF、中音MF、低音LF)が主流。
  AESが定める各帯域の最低電力定格仕様:
  スピーカー帯域 —— HF —— MF —— LF
  1W@1m値 —— 112dB —— 109dB —— 103dB
  AES電力定格値 —— 200W —— 400W —— 1000W
  算出最大SPL値 —— 141dB —— 141dB —— 139dB
  スピーカー最大音圧MAX.SPL算出法:
  あるブランドのスピーカー感度(1W@1m)が高音112dB、中音109dB、低音110dBの場合、次式で最大音圧を算出可能。
  式2:
  最大音圧 = スピーカー1W@1m感度 + 10log(AES定格最低電力) + 6dBピーク係数
  SPL = 高音112 + 10log(200W) + 6dB
  SPL = 112 + 23 + 6
  SPL = 141dB
  エンジニアリング電卓では連続入力可能。一般的電卓では高音200Wをlog→10倍=23.010299… +112dB=135.0102… +6dBピーク係数→141dB。このスピーカー高音ユニットは要求条件139dBを上回る。
  ここで有用な数学式が導かれる:任意ワット数のパワーアンプをdBWに換算する式:
  式3:
  10log(ワット数)
  中音ユニットも同様に式2で算出。ただし低音ユニットSPLが基準未満のため、同周波数特性の低音スピーカーを1台追加し、設定音圧基準を満たす必要あり。
  第二の方法は、中/高音域エネルギーを減衰させ周波数帯域全体の音圧を整合させることで、事前設定音圧基準値を実質的に低下させる。
  141dB SPLから139dB SPLへの低下は、単なる3dBの問題ではない。前稿で述べたように、人間の音の大きさ知覚特性は±3dB変化で、この3dB変化はパワーアンプ出力を±10倍変化させることに相当する。
  上記は8Ω接続例。実際の投資ではほぼ4Ω並列接続(2台のスピーカーをアンプ1チャンネルに接続)が主流。その差異を見てみよう。高音112dBのスピーカー1台にさらに1台追加すると115dB。
  10log(10^(112/10)+10^(112/10))=115
  さらに200Wアンプを4Ω駆動時、一般に75%の電力増加(線損等で100%増加は不可)→約300Wで2台の高音ユニットを駆動。
  式2に代入:
  最大音圧=スピーカー1W@1m感度+10log(AES定格最低電力)+6dBピーク係数
  MaxSPL=115dB+10log(300)+6dB
  MaxSPL=115+24.7+6
  MaxSPL=145.7=146dB
  この結果は設定音圧基準を満たす。パワーアンプを増強せずに音圧が増加したが、違いは?スピーカー台数を増やしたこと、そしてより重要なのは各パワーアンプの消費電流が2倍となり、サーマルプロテクション問題が顕在化することだ。温度上昇後、多くのアンプはトリップまたは出力低下で急速冷却するため、問題となる。
  OK、先の8Ω内容に戻る。実際、経験者は音圧感覚を倍増させるには約10dBの差が必要なことを熟知している。
  実務的観点から説明する。読者各位は、あるブランドスピーカーの各帯域最大SPL値が判明したため、適切な出力のアンプを選択する。次式で各帯域の電力定格値を算出:
  式4:
  dBW = 音圧ピーク値 ─ 帯域ユニット感度 + 距離損失
  式中の「音圧ピーク値」は先に導出したダイナミックピーク値101dB(95dBリスニング+6dBダイナミックピーク)。さらに希望の10dBヘッドルームを加算:101dB+10dB=111dB。「帯域ユニット感度」はスピーカー各帯域ユニットの1W@1m値。「距離損失」は80フィート(24m)から算出した28dB音圧損失値。各帯域の値を代入し電力必要量を算出:
  高周波 (111dB─112dB)+28dB=27dBW。
  中周波 (111dB─109dB)+28dB=30dBW。
  低周波 (111dB─103dB)+28dB=36dBW。
  dBWを電力ワット数に換算(表参照):
  高周波 27dBW=500W
  中周波 30dBW=1000W
  低周波 36dBW=4000W
  整理後、低音部分のデータが大幅な増強を必要とすることが判明。複数台の1000Wパワーアンプ+低音スピーカー、または前述の4Ω方式で設定基準を達成可能。本稿を読めば、いくつかの簡易数学式が得られ、事前計画での必要音圧や使用ダイナミック値等の算出に役立つ。皆様が使用するメインスピーカーの仕様を確認されたい。例として筆者のMARTIN VRS-1000:
  1m@1W=106dB、1000Wパワーアンプ使用→106+30=136dB
  1m位置。一般的4Ω接続なら109+31.5=140.5dB(1m位置)。
  本稿の目的は、皆様のパワーアンプとスピーカーシステムが持つ潜在能力を理解させることである。これは音質の良し悪しを含まず、単にパワーアンプとスピーカーの話。さらに上位のプリアンプ部分はどこに調整すべきか?基準は何か?これらはシステム構築後に調整・理解すべき事項である。
  Mixing Console&Processors(ミキシングコンソールとプロセッサー)
  ミキサー出力レベルと下位プロセッサー間のレベル整合、最終的にパワーアンプ接続時には、ミキサーで合成した音声信号のレベル表示がどの値でパワーアンプを満載駆動し、どの値でアンプが最大ピーククリッピングに達するかを明確に把握することが極めて重要。
  一般的なミキサーは+18dBu、甚至+24dBuの出力レベルを処理可能。簡潔に言えば、+4dB(1.23V)=0VUを基準とする場合、デジタルプロセッサーが-18dB(dBFS)或いは-20dB(dBFS)=+4dBu設定なら、パワーアンプのフルスケール入力が0.775V或いは1.4Vの場合、アンプ全体の動作範囲を明確に把握できる。したがって、アンプのピーククリッピングとゲインをデシベル値と電圧の関係で理解・定義することは非常に重要。